羽津の昔「年中行事」

 

6月

サヌボリ

6月は、菜種刈り、麦刈り、そして田植えと農作業の最も忙しい時期であり、従って年中行事といったものは一切なかった。そんな暇はなかったのである。

近年、志氐神社においては、6月30日のいわゆる「夏越し」の大祓いの日に「茅の輪くぐり」をやっているが、昔はそのようなことは行われず、そもそも夏越しとか大祓いとかという言葉も使われなかった。

当時の田仕事では、だいたい6月20日ごろに田ならしをし、6月25、26、27日頃に、一斉に田植えが行われたが、これらの日は羽津農会で決められ厳守するべきものとされていた。抜け駆けは許されなかったのである。

田植えが終わると、「サヌボリ」といって、村中が仕事を休み、家々ではご馳走をつくって食べ、あるいは蒸し餅、ぼた餅、ふつうの餅を搗いて田植えを手伝ってもらった家などに持っていった。
この「サヌボリ」は、他の地方では「サノボリ」「サナブリ」ともいわれる農耕儀礼のひとつであり、サの神すなわち田の神が田植えの終了によって帰り上がるのを送る意味のものであったとされている。

「サヌボリ」があったからには、田植えはじめの祭に行われる「サオリ」、すなわち田の神を招き降ろす祭りもあったはずだが、その伝承は当地には残っていない。