羽津の昔「人生儀礼」

 このページは、昭和58年3月15日に発行されました「羽津のむかし 第2集 人生儀礼と年中行事」(羽津地区民俗同好会編)を基に作成しています。

人生儀礼は、通過儀礼ともいわれ、個人の生活史のなかで成長の重要な時期あるいは段階に行なわれる儀礼です。これには、個人の誕生、成人、結婚、厄年、死亡にいたる各々の通過点において、個人および家庭のレベルで行なわれる儀礼と、それを超えた地域社会のレベルで行なわれる入団式、入信式、承認式などといった儀礼とがあります。

ここに掲げたのは、専ら前者の個人および家庭を中心にした儀礼になっています。
個人および家庭を中心にした儀礼とはいうものの、それが社会から切り離されたところで閉鎖的に行なわれていたのかというと、そうではありません。たとえ、個人や家庭生活に深くかかわる儀礼であっても、それは最終的に地域の人々、すなわち社会の承認を得ることを目指していました。出産祝い、結婚祝い、そして、葬祭にしても常にその儀礼を行なうことによって親戚のみならず地域のすべての人々に披露し、その祝福なり、承認なりをうけるべく深い配慮に基づくものだったのです。

人生儀礼は、個人と家と共同社会が密接なつながりをもち、しかも三者のバランスがうまく保たれた中で展開されてきたのですが、近年は、この三者のバランスが崩れ、個人が強くなって閉鎖的なものとなってきています。

私たちの祖先が、そこに確固とした共通の意味を置いて続けてきた人生儀礼ですが、その中には、確かに現代の感覚からして、不合理と思われる側面もあります。と同時に、現代に生きる我々にとって学びとるべき知恵も決して少なくはないように思われます。

ここに掲載した人生儀礼は、ほぼ大正時代にこの羽津地区で行なわれていたものですが、「羽津のむかし 第2集」が刊行された昭和50年代で、既に殆どが変化し、或いは断片化してしまっていました。しかし、そうした断片の中にも、かっての形態をうかがわせるものが含まれていると考えられます。

 

 

  目次
           
  1 出産   2 婚礼   3 葬制
           
  (1)妊娠   (1)相手の決定   (1)葬式
           
  (2)出産   (2)縁談の成立   (2)その後の供養
           
  (3)育児   (3)結婚式   (3)その他
           
  (4)成人祝い   (4)婚礼以後    
           
  (5)厄年と年祝い